Web担当者が“楽”になるCMSとは? NEW FOLKが提案する「ヘッドレスCMS」という選択肢

Webサイトの運用において、CMSは欠かせない存在です。しかし「更新しただけでレイアウトが崩れた」「管理画面が複雑で触りたくない」など、CMSを使っていても思ったように楽にならないという声をよく聞きます。

便利なはずのツールが、なぜ運用の足かせになってしまうのか。株式会社NEW FOLK代表でクリエイティブディレクターの本多敏之氏から、CMSの選び方や設計の考え方などが紹介されました。(2025年春 web professional summitセミナー資料より抜粋)

目次

サイト運用のトラブルは、CMSの“構造”により起きている

Webページをプログラムなしで作成・更新できるCMS。いまや多くの企業や人がCMSを使用し、エンジニアが常にいるわけではない環境でもサイト運用が可能となっています。

ただし残念ながら、CMSを導入しても、必ずしも運用が楽になるとは限りません。「更新作業で表示が崩れた」「管理画面が煩雑で操作しづらい」といった声は、制作や運用の現場で日常的に耳にします。

こうしたトラブルの多くは、サイト運用担当者の使い方やスキルの問題ではなく、CMSの構造に起因しているケースが少なくありません。

たとえばWordPressのような従来型CMSでは、管理画面と公開ページは密接に結びついています。入力や設定を少し間違えただけでレイアウトが崩れたり、コンテンツが表示されなくなったりと、扱いの難しさを感じる場面がしばしば存在します。

また、プラグインの干渉やPHPのバージョン違いなど、サイト運用担当者では制御しきれない技術的要素によって不具合が生じることもあります。CMSの導入によって効率が上がるどころか、逆に運用負荷が増してしまうケースがあるのです。

さらに、10〜20ページ程度の中小規模サイトであっても、過剰なCMS機能が搭載されていることで逆に運用が煩雑になり、必要な更新作業が遅れたり属人化したりといった問題さえ発生します。

CMSは便利なはずなのに、更新が面倒。触りたくない。こういった感情を抱かせる原因の根源は、ツールの仕組みや構造にあるのかもしれません。

CMSとフロントを切り分けた“壊れにくい構造”

こうした課題へのアプローチとして、NEW FOLKが提案しているのが「ヘッドレスCMS」です。ヘッドレスCMSを導入することで、CMS側と表示側(HTMLやデザインの部分)を切り離したサイト構成が可能となります。

従来型CMSでは、CMS管理画面(バックエンド)と表示デザイン(フロントエンド)の機能は一体化しており、多機能を搭載した大構造となっていました。

これに対し、ヘッドレスCMSは「フロントエンドとバックエンドが分離」された構成です。

  • サイトやページの更新を行う、CMSの管理画面(バックエンド)
  • データを元にReactやNext.jsといったモダンなフロントエンド技術でページ描画(フロントエンド)

というような2機能に分かれており、CMSで作成したデータはAPIでフロント側に提供される。そのため、編集作業がサイトの見た目に直接影響する心配が少なく、運用の負担も減らすことが可能となります。

つまり「分けて考える」という発想によって、更新作業によるサイト表示トラブルが発生しにくくなるのです。

さらにCMSの管理画面自体「投稿者にとって必要な項目だけを見せる」設計にすることで、操作ミスを防ぎやすくなる効果まで期待できます。

SaaS型CMSを使えば、サーバーの構築やバージョン管理といった技術的な運用負荷も大幅に減らすことができます。静的なHTMLとしてビルドし、CDNで配信する構成にすれば、表示の高速化と安定性も実現しやすくなります。

Web担当者にとっての4つの”楽”

  • 更新作業が表示面に直接影響しにくく、表示が壊れにくい
  • 投稿者ごとに不要な機能を見せない、迷いにくい管理画面
  • CMSはSaaS上で提供され、サーバー管理の煩雑さから解放
  • 静的HTML+CDNによる高速かつ安定した配信が実現

ヘッドレスCMSは、高度な技術者のためのものと思われがちです。ですが実際は、むしろ運用負荷の少ないCMS運用を求めるWeb担当者にとってこそ相性の良い仕組みだとも言えるでしょう。

小規模サイトこそ、実は一番ヘッドレスCMSに向いている

ヘッドレスCMSは、開発規模の大きいプロジェクトに使われる技術というイメージを持たれがちですが、NEW FOLKではむしろ、10〜20ページ規模のコーポレートサイトや、1ページ構成のLPなど、もっと小さなサイトこそ相性が良いと考えています。

というのも、こうした中小規模サイトでは、必ずしもすべてのページにCMSを導入する必要がありません。お知らせページなど更新が必要な箇所だけをCMS化し、それ以外は静的に構成することで、保守や表示トラブルのリスクを大きく減らすことができます。

たとえば、サービス紹介LP「SPOTS」では、FAQや導入事例といった定期更新が必要なセクションのみをCMSで管理しています。フォームは外部ツールと連携させ、フロントはNext.js、ホスティングはCloudflare Pagesで行うなど、軽量かつシンプルな構成になっています。

また、Canvas社のコーポレートサイト(10ページ未満)の例では、NEWSやWORKSといった定期的に更新が必要なページのみをOrizmでCMS化

それ以外の固定ページは静的に構成し、Next.jsとVercelを使ったフロントで展開しています。

こうした事例に共通しているのは、「CMSを導入するかしないか」ではなく、「どこにCMSを導入するか」を考えるという視点です。全ページをCMSで管理しようとするのではなく、サイトの役割・運用体制・更新頻度に応じて構成を設計することこそが、最も“楽に運用できるCMS”につながると実感しています。

CMS選びに必要なのは「何ができるか」より「どう続けられるか」

CMSを比較検討する際、「どんな機能があるか」「どこまで自由にカスタマイズできるか」といった開発側の視点が先行しがちです。もちろん、機能や柔軟性は重要な要素です。しかし、Webサイトの価値を左右するのは、ローンチ後の更新・運用がうまくまわるかどうかです。

CMSは、プロジェクト開始時に一度選べば終わりというものではなく、長期にわたって運用に関わるすべての人が付き合い続けるものです。更新のたびに不安が残る、触りたくない、使いづらいと感じるCMSでは、結局サイトそのものが更新されなくなってしまいます。

だからこそ、CMSを選ぶ際には「どこまでCMSを導入するか」「どの構造なら“壊れにくいか”」といった視点が重要になります。ヘッドレスCMSは、その一つの有力な答えであり、特に小規模サイトのように「少人数で・必要なところだけ更新したい」という現場には非常にフィットします。

CMSは機能の多さで選ぶのではなく、運用のしやすさで選ぶべきです。壊れにくく、迷わず、任せられて、速い。そんなCMS運用を実現する選択肢として、ヘッドレスCMSは今後ますます注目されていくでしょう。


▼セッションで使用されたスライドの全ページは、以下よりご覧いただけます。

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文/岡野花梨(ちょっと株式会社)

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