作って終わりにしないWebサイト運用。事業成果につなげる考え方と実践例

新規事業の立ち上げやブランドリニューアルのタイミングで、多くの企業が膨大なリソースを投じて立派なWebサイトを作ります。しかし、その後の運用がおざなりになっているケースは少なくありません。事業の成果につながるかどうかは、サイトを作った後の運用次第です。
本記事では株式会社GIGによる実践的なノウハウをもとに、Webサイトの運用で差をつけるにはどうするべきかを解説していきます。(2025年春 web professional summitセミナー資料より抜粋)
サイト制作の誤解とリアル
多くの企業が、新規事業の立ち上げや、ブランドの見直しのタイミングで、「サイトを新しく作ろう」という話が持ち上がるのではないでしょうか。
そのサイト制作には、数百万円から1000万円近い投資が必要になるケースもあります。だからこそ、「しっかりお金をかけて、良いサイトを作れば、それで成果が出る」と考えてしまいがちです。
しかし、それは大きな誤解です。
サイトは「作った瞬間がゴール」ではなく、「作ってからがスタート」になります。運用を通じてアクセスを集め、ユーザーを顧客に変えるサイトに育てることで、事業に貢献する資産になります。
事業に貢献するサイト運用の3つの視点
事業に貢献するサイト運用を、次の3つの視点でとらえています。
- 集客
まず必要なのは、顧客を集客するツールとして機能することです。例えば、SEO対策を通じて自然流入を獲得したり、広告・SNSを活用して外部から流入するように作る必要があります。 - コンバージョン
次に適切な情報設計と導線を設けて、訪問者を見込み顧客に変える仕組みが大切です。流入したユーザーが求める情報を与え、問い合わせや申し込みといったアクションに導く必要があります。 - モニタリングと改善
最後にアクセス解析やヒートマップツールを使って、どこにボトルネックがあるかを分析し、継続的にPDCAを回す仕組みを整えることが不可欠です。
集客とコンバージョンの施策は一回きりではなく、そこから仮説検証・改善を繰り返すことで、より施策の精度を高めることができます。
この3つの視点を常に持ち続けて運用することで、ようやく事業に貢献できるサイトを作ることができるのです。

サイト運用の優先順位の考え方
ただサイト運用には「やるべきこと」があまりに多く、何から手をつければいいか迷ってしまうケースが少なくありません。
すべての施策を試すことができれば良いですが、マーケティングにかけられるリソースには限りがあります。その中で成果を出すには、実際のデータをみて「何の施策が必要か」を考え、インパクトのある施策に集中することが大切です。

施策の優先順位をつける前に、「課題・仮説・解決策」の1セットで施策を考えます。
● 課題:数値やユーザー行動から明らかになった停滞・伸びしろなどの見えている課題
● 仮説:背景を想定し、「こうすれば解決できるかもしれない」という考えを立てる
● 解決策:仮説に基づき、実行可能で成果に直結する施策を具体化する
「なぜその施策をやるのか、どういう結果が得られるのか」のロジックを組み立てることで、施策のインパクトや工数を把握し、優先順位をつけることができます。
また、仮説を持たずして施策を打っても、まぐれになってしまい本質的な成果にはつながりません。
課題に対して具体的に何をすべきかまで落とし込むことによって、成果につながる施策を優先的に実行することができ、成果へとつながります。
サイト運用の成功事例
実際にサイトを運用していくなかで、どのような施策を実施し、どのような成果につながったのかを具体的に紹介します。
株式会社GIG
自社事業のフリーランスデザイナー・業務委託向けエージェントサービス「クロスデザイナー」では、サービスサイトの作成やコンテンツ制作、運用体制の構築まで、ゼロからの立ち上げを行いました。
このサイトで実施した、具体的な施策は以下の通りです。
● SEOキーワード調査に基づく高品質な記事コンテンツを制作
● 効果測定の結果を基にPDCAサイクルを回し、最適化を継続
● Webマーケティングやサイト運用のノウハウを社内に蓄積
● リリース半年で記事100本、セッション数1万SS/月を実現
その結果、サイトリリースから約6ヶ月で、法人リードを安定して月15件獲得できるサイトへと成長しました。

株式会社ナレッジリーン
ESGコンサルティング事業を手がける株式会社ナレッジリーンさまに、Webサイトのマーケティング強化を目的として伴走型のサポートをおこないました。
このサイトで実施した、具体的な施策は以下の通りです。
● SEOキーワード調査に基づく高品質な記事コンテンツを制作
● サイト訪問者数を目的値に向けて増加させる施策を段階的に実施
● アクセス解析の基礎を社内講座として提供し、内製化を支援
● 効果測定の結果を基にPDCAサイクルを回し、最適化を継続
● Webマーケティングサイト運用のノウハウを社内に蓄積
その結果、1年間でセッション数が4倍に増加。リード獲得のためのマーケティング基盤が整い、継続的な改善ができる体制も構築できました。

まとめ
今回ご紹介したように、サイトは「作ったら終わり」ではなく、運用をして初めて事業に貢献するサイトへと成長します。
集客、コンバージョンに最適なサイトを制作し、PDCAを回して運用改善していくことが重要です。また、実際のデータを見て「何の施策が必要か」考えるようにしましょう。
まずは、自社の課題とやるべきことに向き合い、「何を、どうしてやるのか」を整理することから始めてみてください。それが、成果の出るサイト運用の第一歩になります。
▼セッションで使用されたスライドの全ページは、以下よりご覧いただけます。

<シリーズ記事はこちら>
・第1回|AI検索時代でも、Webサイトの成果を生むUX視点【マーケティングUXとアクセシビリティUX】
・第2回|Web担当者が“楽”になるCMSとは? NEW FOLKが提案する「ヘッドレスCMS」という選択肢
・第3回|大規模サイトをどう設計し直すか──株式会社キテレツが取り組んだリニューアル事例に学ぶ運用改善の視点
・第4回|サイトリニューアル後の「うまくいかない」を防ぐために──スタジオスプーンが語る、制作者と依頼主の「見え方の違い」とは
文/小嶋七海(ちょっと株式会社)
