
シズル感あふれる“湯気動画”で心を掴む
[撮影機材は?]→ iPhone1台で撮影し、1分で投稿完了
西尾 両口屋店主の礒貝隆男さんは、接客を担当する妻と母との3人で店を切り盛りしている。和菓子の調理とネット上での情報発信は、はちえん先生こと坂田誠さんの講座で学んだ礒貝さんが一人で行う。
「スマホが浸透し、誰もがお店の情報をネットで検索する世の中になったことで、自分で情報発信をしないと誰かが書いたことがこの店の事実になってしまうという不安感を持ち、3年前から坂田先生のセミナーに通い、SNSを開始しました。伝えたかったのは、『手づくりしたできたてのものを売っています』ということ。友人に『それなら今日の湯気が良い』と言われ、湯気動画をアップし始めました」
湯気動画は、3つのSNSで公開している。
「もっともリアクションがあるのがInstagram。撮影はiPhone1台で行い、投稿まで1分程度で完了します。毎日いくつもの和菓子を平行してつくり忙しい中で、無理なく続けられる方法です」

[タグとコメントのコツは?]→ 独自タグ「#湯気スタグラム」で個性を印象づける
投稿する湯気動画には「#湯気スタグラム」という独自タグをつけている。
「最初は独自タグの効用をあまり理解していませんでしたが、ずっと続けてきたことで、できたての湯気といえばあの店という個性が伝わったかなと思います」
Instagramのフォロワーは1月末時点で約4,600人。湯気スタグラムには、200~1,000以上ものいいね!が付く。
「コメントは、『買ってください』みたいな商売っ気を出さず、うっとうしくならないよう気をつけています。また、うちは通販をしていないので、商圏は西尾市周辺と割り切っています。そのため、西尾市で和菓子店を探す人が使いそうなタグをたくさん入れています」

[動画の周知は?]→ QRコード掲載の名刺を配布
昨年10月には地元のテレビ番組で紹介され、来店客はさらに増えた。その機会を次へと繋げている。
「放映前にたまたま著名なマーケターの方にお会いし、『放送を見てお客様が来店された後の準備をすることが大事』とアドバイスをいただいたので、InstagramなどのQRコードを入れた名刺を用意し、配布しました。そこからさらにフォロワーが増えました」
もちろん、同店の目的はフォロワーやいいね!を増やすことではない。店舗への集客だ。
「Instagramを見て来店するお客様は増えました。湯気スタグラムを見て『いまこれができたてなんですよね?』と来られる方や、市外からいらっしゃる方もあります。毎日の情報発信は想起されやすくするという目的もあるので、今後もコツコツと続け、『和菓子が食べたい』と思ったときにすぐに思い出してもらえる存在でいられるようにしていきたいです」


1965年に開業した、愛知県西尾市の和菓子店「西尾 両口屋」で、父の跡を継ぎ2代目店主を務める。愛知県優秀技能者表彰「あいちの名工」、和菓子1級技能士などに裏付けされた職人の技で、日々できたて、蒸したて、焼きたての和菓子をつくり続けている。